ユトリとサトリのあいだ

大学生だったり時々、虫を食べたり

絶滅危惧種うなぎを食べることについて-土用の丑の日を目前にして

今年も土用の丑の日が目前に迫っている。

うなぎを食べる箸を休めて「うなぎを食べてもいいのか問題」について考えてみたい。

 

 

事実と曖昧な点を分ける

まずウナギ問題にはあらゆる誤解とウソと真実が混ざり合って存在している。

これがごっちゃになって議論されているうちは効率的な議論が進まない。

今回はうなぎ問題でよく言われていることの事実とウソを明確にすることから記事を始めたいと思う。

というのもウナギを食べてもいいのか悪いのかを調べているうちに僕自身がよくわからなくなってきたからだ。

 

事実

ただし絶滅危惧種は二ホンウナギを含めた3種(世界には19種のウナギがいる)

  • ウナギの数は減少している。

 ただし昔のデータは正確さに疑いがある。しかし個体数の減少は事実のようだ。

Eels are decreasing

ウナギに関する情報(水産庁)より引用

 

ウソ・誤解

  • 日本人がウナギを食い尽くしている

30年以上前のデータである。今は世界消費の15%が日本人である。

  • ウナギの数は前年の1%まで落ち込んだ

漁獲量は月変動があり、その年の漁獲量は最終的には十分な量あった。

  • 絶滅するのは二ホンウナギだけなので中国産を食べればいい

二ホンウナギは種名であり、中国でも二ホンウナギが取れる。中国産の二ホンウナギを食べているだけなので結局は二ホンウナギを食べている。

 

事実かウソかわからないこと

  • 流通するウナギの稚魚の50%は密漁によるもの
  • ウナギの減少は人間が採りすぎたから

生き物の数の増減にはあらゆる要素(天敵・環境・人間etc)が絡んでいるため現時点では漁獲がウナギの減少の要因とは言い切ることができない。

 

土用の丑の日にウナギを食べる

今年の土用の丑の日7/27(土)だ。

ja.wikipedia.org

この日にウナギを食べるのは、その昔のウナギ商人が「本日、土用の丑の日」と張り紙をするとウナギが飛ぶように売れたからだという説があるそうだ。つまりバレンタインデーのチョコレート、節分の恵方巻きのようなものである。

土用の丑の日にうなぎを食べる文化は鰻屋が生んだのだ。

unagi don

鰻丼

 

うなぎは絶滅危惧種

ここからが本題。

ウナギは絶滅危惧種である。

ここで注意すべき点は前述のように全てのうなぎが絶滅危惧種ではないという事だ。ウナギには19種が確認されているが絶滅が危惧されているウナギは「ニホンウナギ」と「ヨーロッパウナギ」、「アメリカウナギ」である。

国際自然保護連合IUCNの発表によると、ニホンウナギアメリカウナギ絶滅危惧種IB類に分類される。近い将来に野生での絶滅が危惧されている種だ。この分類にはジャイアントパンダやラッコも含まれる。ヨーロッパウナギについてはその分類よりもひとつ上のランク絶滅危惧種IAに分類され、個体数の減少がIBよりも深刻で極めて近い将来に絶滅が危惧される種だ。

  

eels

今回の記事では、ニホンウナギのみを話題の中心にして書いていく。日本国内においてはヨーロッパウナギアメリカウナギの輸入、食材としての商用利用はニホンウナギに比べて少ないと言われていることが理由だ。ここからウナギと書いてあったら、特になにもない限りニホンウナギのことを指す。

絶滅危惧種だから食べてはいけないのか?

実は僕自身は2017年からつい2019年の最近まで鰻を食べていなかった。その理由は、Twitterや様々な場所での「うなぎは絶滅危惧種だから食べてはいけない!」という言説のためだ。ところがある時、僕が鰻を食べていないことを話すと、友人Mがこう訪ねてきたのである。

M「食べないことで鰻の絶滅は防げるのか?」

と。

それまでに鰻の絶滅に関して、深く考えたことのなかった僕はそれを機会に考えてみようと思った。それがこの記事を書いたきっかけである。

 

その友人Mは生き物のトピックに関しては敏感で様々なアイデアを与えてくれる。以前にも女性Youtuberのタガメ騒動に際していち早く情報をくれた。

そのときの記事がこれだ。

www.yutosato.work

 

うなぎの話に戻ろう。

さてウナギが絶滅危惧種であることは事実である。

それは認めなければならない。

 

まず水産庁と日本自然保護協会のウナギ食をまとめたサイトを紹介したい。

結局“絶滅危惧種”ウナギは食べていいのか 水産庁と日本自然保護協会に聞いてみた (1/2) - ねとらぼ

 

上のサイトでの水産庁のおおまかな意見は

「現時点ではうなぎの減少の理由は明確ではない。また、仮に禁漁措置を取ってしまうとウナギ業者の多くが存続不可能になるため、禁漁にすべきではない。」ということである。

日本自然保護協会によると

「個体数減少の事実に目を向ければ、原因が特定できない今はウナギを食べるべきではない。」 ということであった。

 

「うなぎを食べていいのか/採っていいのか」という話題は、生物保護の問題と商業的な問題が絡み合っているのである。

さてここで一つの疑問が生じる。

 

食べ控えることで鰻の減少を止めれるのか

今考えられるうなぎの減少要因は大まかに言えば次の3つに分類されると言われている。

  1. 過剰な漁獲
  2. 生息環境の変化
  3. 海洋環境の変化

 

人間の食べ控えによってウナギの減少が止まるのはその原因が過剰な漁獲にあった時だけだ。

 

そして

食べ控えることでウナギの減少を止める。

という意見の裏には非常にシンプルな経済原理がある。需要と供給の関係だ。

うなぎの減少が止まるのは、我々消費者のうなぎ消費が落ち込むことで、うなぎ業者がシラスウナギの捕獲を止めるに至るというプロセスである。

うなぎ需要が低くなれば市場に出回る量が減り、結果としてうなぎの保護になるというわけだ。

つまりウナギを食べてはいけないのは、私たちが食べることで需要が増加するからだ。

 

こういったことを考えると食べ控えはおそらく達成されないだろう。

なぜならウナギは美味しいからだ。それに尽きる。

需要と供給の関係は「ウナギが絶滅寸前」かどうかには全く関係の無い要素である。生活の面で見ると、人々が食べ控えをするインセンティブが存在しない。

 

またもう一つ食べ控えできない原因がある。いくら賢明な人々や自然保護協会が「ウナギを食べるのをやめましょう」ということを叫んでいる状況だとしても町のスーパーにはかば焼き用のパックが並ぶ。いつでもすき家でうな丼を食べることができる。

cooked shoyu-flavored eel

こんな状況では、人々が「ウナギ食べてもいいじゃん」と思ったとしても無理からぬことだ。現に街にはウナギを売る人が溢れていることがウナギはまだまだたくさんいることを人々に思わせる。

 

生き物が絶滅するとき

ここまで読んだあなたは、

まだまだウナギは絶滅しないってことか!本当にやばくなったら国が規制するんでしょ?

と思うかもしれない。

 

それは半分誤りで半分正解だ

まず本当にやばくなったら国が規制するんでしょ。の部分。

これは正解だ。日本には「種の保存法」という法律があり、これが二ホンウナギに適用されれば二ホンウナギは食卓から消える。

また「ワシントン条約」に二ホンウナギが選ばれれば輸出入取引は禁止される。世界でも二ホンウナギを食べる人は激減するだろう。

 

しかし二ホンウナギがまだまだ絶滅しないというのは誤りだ。

正確に言えば誤りではなく、「誰もそのことについてはわからない」ということになる。

 

生き物が絶滅する要因は多数ある。

その中でも「数」に関しての要因として最小存続可能個体数という概念を紹介しよう。

ja.wikipedia.org

平たく言えば「生物の個体数がある基準を切った時、その生物は絶滅へと向かう。」という考え方だ。生き物の個体数は常に外部環境に左右され、年によって幅がある。

仮に気温の影響でウナギが少ない年に漁獲のペースを落とさなかったとしよう。それがウナギを真の絶滅へと向かわせる可能性はあるのだ。

そういう意味では(本当のところはわからないが)ウナギが絶滅するのも秒読みかもしれない。

 

おわりに

僕個人の結論を出すと、「現時点では食べ控えをしても意味がない。」ということになる。しかしそれは「絶滅するまで食い尽くせ!」という意味ではなく、これは個人の意識でどうこうできるレベルを超えているという意味だ。

 

個体数の減少が事実である以上、流通量を意図的に減らすなどの努力は必要であると考える。水産庁やウナギ関連業者は正しく現状を認識し、速やかに行動に移す必要があるだろう。

喜ばしいことに完全養殖の技術はすでにあるそうだ。完全養殖が実用化レベルになれば、それはウナギを持続的に食卓に提供し続ける唯一の方法になるだろう。

 

大事なのは私たち一人一人が自分の意見を持つことだ。周りに流されず自分で考えた上で鰻を食べるかどうかを決めて欲しいと思う。

 

タガメは持続的な食材なのか

www.yutosato.work