今回の記事では、生物学を学ぶと必ず出でくる「真社会性動物」について、「大学の基礎レベルで」シェアしていこうと思います!
そもそも真社会性動物ってなに?
高校で生物を勉強したり、生物が好きな人で本などを読んでいる人は、1度は耳にしたことがあるであろう「真社会性動物(社会性動物)」という言葉。正直、よくわからないって人いますよね(^▽^;)
ここではそんな人たちや、初めて聞いた!っていう人たちのために、ザックリ解説していきます!
そもそも社会って何でしょうね…
社会にはいろいろな定義があり、私たち現代人が生きているこの環境も、社会ということができます。現代では多くのヒトは直接的、もしくは間接的に、誰かほかの人と関係もつことで社会を形成しています。つまり助け合ってるんですね(^^)
ヒトのように助け合って1つの集団を作ることで生きている生物は、実はたくさんいます。みなさんの周りを見渡してみると、すぐにみつけることができるんではないでしょうか?
たとえばアリ、ハチなどの昆虫は集団で生活していますよね?
ヒトもアリも集団で生活して「社会」を作っていますが、この2つの社会には大きな違いがあります!それは「アリの集団はすべて家族である」ということです。
虫が多くなる季節になると、女王アリや、女王バチって言葉聞きますよね?これはアリの中に権力者がいて…という話ではなく、この女王とは単に「お母さん」を指します。
どういうことかといいますと、アリやハチなどの家族で集団を作る動物の一部は、お母さんが一人しかいないんです!一人のお母さんが頑張って子供を増やす代わりに、大きくなった子供たちは、お母さんを守るためや、自分の兄弟姉妹を育てるために働きます。
このような仕組みをもつ動物を「真社会性動物」といいます。上の文章で「家族で集団を作る動物の一部」といったのは、家族で集団をつくるものの、ほかの仕組みをもっている動物もいるからです。たとえばライオンなどは家族で集団を作りますが、お母さんはたくさんいて、みんなが兄弟姉妹というわけではないです。
つまり真社会性動物というのは、ひとりのお母さんから産まれた子供たちだけで集団生活をする動物たちのこと、ということになります。
ハミルトン血縁淘汰説!?
真社会性動物とは何かについて、なんとなく理解していただいたんではないでしょうか。でも、このしくみ、ある問題点があるんです。
生物をあまり知らない人も「ダーウィンの進化論」は聞いたことありませんか?簡単に説明すると、生物の進化は、生物の何か(形・行動など)が変わる「(突然)変異」と、それが自然界で生き残ることができるか否か、という意味の「自然選択(淘汰)」によって決まる、ということです。ダーウィンさんが、進化を説明したくて考えた理論ですね。
この理論では生物はすべて「利己的な行動」をすると暗に仮定されています。つまり、すべての動物が、自分が生き残るために必死に頑張った結果、本当に生き残った者が選抜されて、生物は今のような形や行動を示すようになった。ということです。
しかしここで問題が生じました。さきほどの真社会性動物のうち、女王以外の子供たちはお母さんを守るために働くと説明しましたね。例えば、ミツバチはスズメバチが巣に襲来すると命を呈して巣を守ることもあります。このように自分のためではなく、お母さんや妹たちのために、つまりは自分以外の他人のためにとる行動を生物学では「利他的行動」と呼びます。
しかしこの利他的行動は、生物では進化しないはずなのです。
どういうことか?例えば、ほかの個体を守る行動をとる「変異」がある生物に生じたとします。その個体は、ほかの個体が守っているうちに死んでしまうと、その個体の子供ができないため、その変異はその個体だけで消えてしまいますよね?
このように利他的行動はダーウィンの進化論では説明できないんです…
しかし実際にはそのような行動をとる生き物はいるんです。この矛盾はどういうことか?
それを説明したのが「血縁淘汰説(血縁選択説)」なんです!
これ進化生物学者のW.Dハミルトンさんが提唱した説で、それまで漫然と受け入れられてきた、「利他的行動は血縁者を助ける行動である」ということを数式で表しました。
その数式を簡単に示すと
C<R×B (c:利他的行動のリスク R:血縁係数 B:受益者の利益)
ということになります。すなわち、血縁関係が近く、その行動を行う利益が大きいほど利他的行動は起こりやすい、ってことですね。またここから発展する形で、同じハミルトンさんの「3/4仮説」や、リチャードドーキンスさんの「利己的な遺伝子」の考え方によって利他的行動は起こりうることが説明されたとされています。
(これらはやや難解なのでまたの機会に紹介したいと思います…)
真社会性動物にはどんな生き物がいるの?
お母さんを守るように進化した真社会性動物ですが、いまでは多くの生き物が知られています。皆さんご存知のアリやシロアリ、ハチなどの昆虫類は「真社会性昆虫」と呼ばれています。
これまではこの一部の昆虫だけと考えられてきた「真社会性」ですが、じつは多くの種でこのシステムが使われていることが知れらるようになってきました。
同じ昆虫ではカメムシやコウチュウなどが続々と発見され、さらにはネズミ、エビにまで真社会性を持つものが発見されました。
ハダカデバネズミは私たちと同じ哺乳類であるにもかかわらず、真社会性を有していることは面白いですね^^
真社会性は「完成されたシステム」!?
真社会性をもつように進化するには、現在いくつかの仮説があり、いまだに詳しくはわかっていません。しかし、いずれの進化のルートにおいても、複雑な過程を経ねばならず、簡単に進化することはできません。
それにもかかわらず、こんなにも多くの生物(それも昆虫から哺乳類まで)がこの仕組みを使用しているのはなぜなんでしょう?不思議ですね…
また真社会性を獲得した後に昆虫がエビになったり、ネズミになったりすることは考えられないため、それぞれが進化した最終形態として真社会性を得たと考えられますよね。そう考えると、じつは真社会性は生物の中でも「完成したシステム」であるって思えてきますね…。人間もいつかは真社会性をもつのかも…
まとめ
・真社会性動物とは、ひとりの母親を子供たちが守ることシステムをとる動物たち
・真社会性動物はハミルトンの血縁淘汰説で説明できる
・真社会性動物はさまざまな種でみられる